NVIDIAはまだ過小評価されている — 高収益・高成長・共存共栄で自社経済圏を拡張し、見通しは明るい

NVIDIAの株価は、ここしばらく市場の期待ほど素直に上がっていません。 2026年4月8日時点の終値は182.08ドルですが、同社の過去最高終値は2025年10月29日の207.02ドル、過去最高の高値は212.19ドルでした。つまり現在株価は、最高終値からでもおよそ12%低く、最高値ベースでは約14%下にあります(Macrotrends)。

しかも、これは単なる一時的な調整ではありません。 2025年7月以来おおむね165ドルから195ドルのレンジに張り付いており、Barron’s も決算後の株価反応について、競争激化やハイパースケーラーの投資持続性への懸念が重しになっていると報じています。つまり、ここ半年近くは、AIの中心銘柄であるにもかかわらず、株価は力強く上向いてきたとは言いにくい状態でした。

市場が警戒しているのは、おそらく次のような論点です。 AI投資サイクルの減速懸念、GoogleなどのTPUや各社のASIC戦略、中国を含む包囲網、そして中東情勢に伴うエネルギー・マクロ不安です。

実際、報道ではNVIDIA株の重しとして競争や設備投資継続への不安を挙げており、同時に中東情勢が市場全体のリスク要因になっているとも報じています。

ただ、私はそれでもなお、今のNVIDIAは悲観が先行しすぎているように見えます。 なぜなら、この会社はなお 極端に高い収益性 を保ちながら、成長率も高く、しかも利益を守りに回すのではなく、積極投資で次の支配領域を広げている からです。

さらに重要なのは、その攻め方が 正面衝突を避け他社と共存しながら 自社の経済圏を広げる「共存」の発想に基づいた、非常に巧妙な形になっていることです。

高収益なのに守りに入っていない

まず押さえておきたいのは、NVIDIAの利益構造の強さです。 同社は2026年度通期で売上高2159億ドル、前年比65%増を記録し、GAAP粗利率は通期で71.1%、第4四半期単体では75.0%に達しました。第4四半期売上高は681億ドルで前年同期比73%増、データセンター売上高は623億ドルで同75%増です。つまり、すでに巨大企業であるにもかかわらず、なお極めて高い利益率と高成長を同時に実現しています(NVIDIA Newsroom)。

ここで大事なのは、これが「成熟企業の高収益」ではないことです。 普通、高い利益率を誇る企業は、どこかで成長率が鈍化したり、投資を抑えて収益を守る局面に入りやすいですが、NVIDIAは異なります。

売上成長が依然として非常に高いだけでなく、会社自身が第4四半期の費用増加要因として、計算基盤・インフラ費用、エンジニアリング開発、新製品導入、人員増 を挙げています。これは、現状維持ではなく、次の成長のために積極的に資本と費用を投じていることを示しています。

要するに、NVIDIAは「高収益を守る会社」ではなく、「高収益を原資にしてさらに攻める会社」だということです。

単に儲かっているだけでなく、投下資本の使い方が異常に強い

さらに興味深いのが、HOLT のCFROIです。

CFROI とは Cash Flow Return on Investment の略で、もともとHOLT Value Associatesが開発し、現在はUBSのHOLTフレームワークで用いられている指標です。UBSはHOLTについて、会計上の主観や歪みを補正し、損益計算書と貸借対照表の情報を CFROIという「企業の実態に近いキャッシュベースの収益率」 に変換する手法だと説明しています。

Investopedia も、CFROIは利益ではなくキャッシュフローに着目し、企業全体の投下資本に対する実質的なリターン、いわば企業全体のIRRに近い見方を与える指標だと説明しています。

The Information は、平均的な非金融企業のCFROIが6%程度なのに対し、NVIDIAは73%で、企業全体でも最上位層に入る水準だと紹介しています。

CFROIは、単に「会計上の利益率が高いか」を見るものではありません。 その会社が、実際に投じた資本から、どれだけ強い現金創出力を生んでいるか を見る指標です。 この観点でNVIDIAが73%というのは、単に儲かっているというより、投下資本が異常に高い効率で回っている ことを意味します。しかも報道では、NVIDIAが高CFROIであるだけでなく、資産成長率でも上位層に入ると説明しています。

言い換えれば、NVIDIAは「高収益企業」であるだけでなく、大きく投資しながらなお高い現金収益率を維持している企業 だということです。

この点はかなり重要です。 もし高収益だけなら、「いまの市場を刈り取っているだけ」と解釈することもできます。 しかし、高収益・高成長・高投資効率が同時に成立している のなら、それは守りではなく、高い利益を原資にして、さらに高成長する分野に積極的にお金をつぎ込んでいると見えます。

「GPU企業」から「AIインフラ支配」へ

今のNVIDIAを、単にGPUを売る会社として見ると、実態を見誤ると思います。 実際にはNVIDIAは、計算チップだけでなく、ネットワーク、ソフトウェア、ラック設計、AIファクトリー設計、さらには顧客側の資金調達や設備拡張の文脈にまで深く入り込み始めています。

Reuters は、NVIDIAがMarvellに20億ドルを投資した件について、顧客がMarvellのカスタムAIチップとNVIDIAのネットワーク・CPUを組み合わせやすくする狙いだと報じました。NVIDIA自身も、MarvellがNVLink Fusion互換のXPUやネットワークを提供し、NVIDIA側はVera CPU、ConnectX NIC、BlueField DPU、NVLink、Spectrum-Xスイッチ、ラックスケール計算基盤を提供すると説明しています。

これは単なる出資ではありません。 むしろ、ASICに顧客が流れたとしても、その周辺の規格、接続、運用基盤のレイヤーではNVIDIA経済圏に取り込んでいく発想だと思います。

さらにNVIDIAは、推論・接続・運用のレイヤーでも攻めています。 AIが学習中心から推論中心へ移るほど、重要になるのはGPU単体の性能だけではなく、大量のGPU、CPU、NIC、スイッチ、メモリをどうつなぎ、どう効率的に動かすかです。NVIDIAは2025年に Spectrum-X PhotonicsとQuantum-X Photonics を発表し、シリコンフォトニクスによってAIファクトリー全体の接続効率や電力効率を高める戦略を明確にしました。

Reuters によれば、GTC 2026では推論向けの攻めが中心テーマになり、NVIDIAは競争が激しくなる中で inference と agentic AI に注力すると見られていました。

また、チップの上流だけでなく、下流のデータセンターやAIファクトリー構築にも関与を強めています。Reuters は、NVIDIA出資先のNscaleが大型資金調達を進め、AI計算需要に対応するデータセンター拡張を進めていると報じました。さらにNscaleは、Microsoft・NVIDIA・Caterpillarとの連携で、ウェストバージニア州の旗艦キャンパスに1.35GWのVera Rubin NVL72基盤を導入すると発表しています(Nvidia支援のNscaleが8GWデータセンター用地を狙う意味)。

Thinking Machines Labとの長期提携 でも、少なくとも1GW規模の次世代Vera Rubinシステムの導入と追加投資が報じられており、NVIDIAは単なる部品供給ではなく、将来の巨大AIプレイヤーの設備計画そのものに深く入り込んでいます(NVIDIA、新興企業への出資でAIインフラ全体の主導権を強める)。

私が重要だと思うのはここです。 AI時代の支配力は、GPU単体ではなく、誰がAIファクトリーの標準構成を握るか で決まる。チップ、ネットワーク、ラック、ソフト、構築パートナー、電力容量まで含めてNVIDIA方式が浸透すれば、競争は単純なチップ比較ではなくなります。

NVIDIAの巧妙さは、「正面から対抗する」のではなく「共存しながら取り込んでいく」ことにある

私は今回、ここがいちばん重要な論点だと思っています。 NVIDIAの強さは、単にGPUが強いことだけではありません。Jensen Huang氏は、競合や顧客を真正面から潰しにいくのではなく、相手が伸びても、周辺でNVIDIAが儲かる構造を作る という、かなり巧妙な戦い方をしています。

これは、共存共栄 の戦略です。 相手と真正面から競合しないことで、相手の成長を取り込みながら、自社の支配領域を広げているのです。

Marvellへの投資は、BroadcomやASIC市場との「共存型の取り込み」に見える

その代表例が、Marvellへの20億ドル投資です。 Reuters によれば、NVIDIAはMarvellに20億ドルを投資し、MarvellがNVIDIA技術と互換性のあるチップや接続基盤を提供する提携を進めています。NVIDIA側はNVLink Fusion、Vera CPU、ConnectX NIC、BlueField DPU、Spectrum-Xスイッチなどを組み合わせ、Marvell側はそれと親和性の高いXPUや周辺チップを供給する構図です。

ここで面白いのは、NVIDIAがBroadcomやGoogleのカスタムチップ路線に対して、全面的に対抗しようとも、競合製品でつぶしにいこうともしていないことです。 Reuters は、BroadcomとGoogleが2031年までTPU共同開発を続ける長期契約を結び、Anthropic向けにもTPU基盤を広げていると報じています。つまりASIC化やカスタム化の流れは、もはや止められません。

そこでNVIDIAは、ASICそのものを全部奪い返そうとするのではなく、ASICが伸びても、その接続・周辺回路・ネットワーク・運用レイヤーではNVIDIA経済圏が残る ようにしているように見えます(NVIDIA Newsroom)。

これは正面衝突ではありません。むしろ、「あなたはあなたで伸びてよい。ただし、その成長の周辺でNVIDIAが不可欠になる」という形です。私はこれを、非常に洗練された共存戦略だと思います。

自動運転でも、NVIDIA版FSDを売るのではなく、各社が独自に作れる

同じ構図は自動運転でも見られます。 NVIDIAは、TeslaのFSDのような完成済みの自動運転体験を直接売り込むよりも、自動車メーカーが独自のモデルを開発できるようにする基盤を広げています。2026年1月と3月にNVIDIAは、Alpamayo 系列のオープンなモデルやツール群、シミュレーション基盤、DRIVE Hyperion を発表し、BYD、Geely、Isuzu、Nissanなどが採用していると説明しました。

ここでも発想は同じです。 NVIDIA自身が「NVIDIA版FSD」を世界中の完成車メーカーに押し付けると、自動車メーカーと真正面から競合することになります。そうなると採用のハードルも上がるし、事故責任や規制の問題も重くなります。 しかし、NVIDIAは、教師モデル、学習環境、シミュレーション、車載計算基盤 を提供し、メーカー側が自分たちの個性を残したまま独自モデルを作れるようにしています。

つまり、自動車メーカーをコモディティ化させるのではなく、差別化の余地を残しつつ、その土台をNVIDIAが握る形です。

これは非常に巧妙だと思います。 相手の主導権を完全には奪わないから採用されやすいですが、しかし、開発の流れ全体にNVIDIAが入ってくるので、結果としてNVIDIAのチップやソフトウェアが自然に選ばれやすくなる。ここにも、共存共栄に見せながら、自社の通行料を広げる 発想があります。

フィジカルAIでも、同じ構図が広がっている

ロボティクスやフィジカルAIでも、NVIDIAは単なる半導体販売ではなく、学習データ生成、世界モデル、シミュレーション、ロボット基盤モデルまでを一気通貫で押さえにいっています。NVIDIAは Cosmos を physical AI 向けの world foundation model と位置づけ、Omniverseをデジタルツインやロボティクスシミュレーション向けの基盤として提供しています。

完成品市場を自社で独占しようとするのではなく、学習環境、シミュレーション、世界理解モデル、基盤モデルを供給し、各社がその上で製品化できるようにしています。

自動運転でもロボットでも、アプリケーションの多様性は顧客側に残しつつ、土台はNVIDIA化する というやり方です。

私はこれこそがNVIDIAの堀(moat)であり、今の市場ではまだ十分に評価されていない点だと思います。

では、懸念は何か

もちろん懸念がないわけではありません。

第一に、CUDAの堀を崩そうとする動きです。 The Information は、TensorWave が「Beyond CUDA」イベントを昨年開き、今年はスポンサーや参加者への配慮から「Beyond Summit」に改名したと報じています。

名称変更自体が、逆にNVIDIAの影響力の大きさを示していますが、同時にコンパイラ、カーネル、最適化レイヤーなどで「脱CUDA」を狙うプレイヤーが確実に増えていることも示しています。

第二に、顧客のカスタムシリコン化です。 先述したように、BroadcomとGoogleが2031年までTPUを共同開発する長期契約を結び、Anthropic向けにも3.5GWのTPU計算基盤を供給すると報じました。

AMDがMeta向けに5年で最大600億ドル規模のAIチップ供給契約を結んだとも報じています。つまり、大口顧客は「NVIDIA一本足」から確実に分散を進めています。

第三に、地政学と電力コストです。 中東情勢はエネルギー価格を通じてAIデータセンターの採算に影響が大きいことが予想されます。

AIファクトリーは電力を大量に消費する事業なので、エネルギーショックは顧客の投資判断を遅らせる可能性があります(Reuters)。

第四に、メモリと部材の制約です。 HBM価格上昇はすでにAIサーバーコストに跳ね返っており、サーバーメモリ価格上昇がデータセンター予算を圧迫しつつある状況です。

足元でもRubin世代でHBM4調達遅延リスクが取り沙汰されています。

NVIDIAは購買力が強いとはいえ、サプライチェーンがボトルネックになることはありえます。

高収益・高成長・共存共栄が揃う今、NVIDIAの将来は明るい

それでも私がNVIDIAを有望だと考えるのは、同社が単に「高性能GPUを売っている会社」ではなく、AI時代の計算基盤そのものを設計し、しかもその周辺にまで投資しているからです。 しかも、その拡張は利益を犠牲にした無理な先行投資ではありません。通期71.1%、四半期75.0%という粗利率、73%という極端に高いCFROI、なお続く高成長、つまり高収益から積極的に投資をしてさらに高い収益を上げるという好循環を生み出しています。

株価は最高値からなお1割強低く、ここ半年ほどもレンジ感の強い冴えない推移が続いてきました。市場が、競争や地政学や投資循環への懸念を重く見ているのは理解できます。

それでもなお、NVIDIAは

  • 極めて高い収益率を保ち
  • それでも成長率が高く
  • しかも守りではなく積極投資を続け
  • さらに他社と真正面からぶつからず、共存しながら自社の経済圏を広げている

という、唯一無二の企業だと考えております。

私はここに、今の市場評価とのズレがあると見ています。 高収益・高成長・共存共栄の戦略 で自社経済圏を着実に広げている以上、NVIDIAはなお過小評価されており、まだ伸びる余地があると考えています。

この記事をシェア

この記事についてのLinkedIn投稿でコメントや意見を共有できます。

LinkedInで議論する

関連記事